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1969年にTRHの化学構造が解明された時点で、我々は簡単かつ経済的なTRHの化学合成の検討を開始した。それにはそれなりの理由があり、ここでは今回の主題である「リュープリンの開発」に焦点を絞って話を進めるべきであるがその前段階としてもう少しTRHの合成研究にふれたい。
いずれにしても、我々はペプチド合成過程で最低限の保護基の使用で、効率的に目的物を得る合成法のモデルとして、このTRHの効率的合成を検討テーマとし、DCC縮合反応注1時にHONB注2と称する添加物を入れるか、HONBの活性エステルを使用する方法を開発し、各工程で徹底的な結晶化を行うことで、最終のTRHも酒石酸塩の美しい結晶として取得することに成功し、実験室レベルでもkgスケールで合成を可能とした。このTRH・酒石酸塩は現在ヒルトニンの名称で遷延性意識障害治療剤あるいは脊髄小脳変性症治療剤などとして市販されている。
■ヒルトニンの化学構造式

| 注1 |
DCC縮合反応:DCCとはDicyclohexylcarbodiimideの略で、強い脱水縮合作用を有し、ペプチドの合成によく応用される。 |
| 注2 |
HONB:N-Hydroxy-5-norbornene-2,3-dicarboximide
右のような化学構造を有し、縮合反応時のラセミ化反応を防止する目的で使用される。 |
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